「あなたのために」辰巳芳子 著 より
「つゆもの、スープ」と人のかかわりの神髄は、と問われましたら、あらゆる理論を超えて、「一口吸って、ほっとする」ところ。
いみじくも「おつゆ」と呼ばれている深意と答えたいと思います。
(中略)
人のゆきつくところは、愛し愛され、一つになることを願い。それをあらわされずにはおられぬ仕組みを生きるところにあると思います。
人間の尊厳も自由も互いに愛惜せねばならぬ根源もここに、見いだされてなりません。
これが、スープの湯気の向こうに見える実存的使命です。
「感動のスープの本をご家庭に」
辰巳芳子 (たつみ よしこ)
随筆家・料理家。聖心女子学院卒業。料理研究家の草分け的存在だった母・辰巳浜子の傍らで日本の家庭料理を体得。また、シェフ数人について洋風料理を長く学ぶ。雑誌やテレビなどで料理を発表するのみならず、日本の食文化を世界のそれと比較してとらえる視点や、食と命の関わりへの深い洞察をもって積極的に発言している。
「あなたのために」文化出版局
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